みちのくの花鳥風月・春の宵
古都では由緒正しき春は終わりを告げ、みちのくでは待ち焦がれた春がようやくやってきた。 桜が咲き、ひとひらの花びらが舞い落ちはじめ、やがて花吹雪となって散り、今は藤の花やつつじがあちこちで咲き乱れ、百花繚乱の様相を呈している。
生きとし生けるものすべての命が再び誕生している瞬間である。新生の時とでもいうべきであろうか。
しかし始まりがあればすべてに終わりも訪れる。
「会うは別れの始まり」だとか。
「花の命は短くて苦しきことのみ多かりき」とは林芙美子が色紙などに好んで書いた短詩である。
そしてその昔「花の色は うつりにけりな いたづらに 我が身世にふる ながめせしまに」と絶世の美女であった小野小町も詠っている。
花は咲き、盛りを迎え、やがて散る。季節は移ろい、再び訪れる。
しかしそれらは決して去年と同じではない。
そんなことに思いをはせていると、鳥が囀り、香しき香りの花々に彩られし季節をわが身は来年も迎えられるのだろうか、このピンクのグラデーションの景色を体感できるのだろうかと思ったりしてみる。
近頃は、年を追うごとに、一日々がいとおしく感じられてならない。ならば生かされていることに感謝しつつ、一日一日を心置きなく、精一杯生きていくほかあるまいと思う春の宵である。
でもね♪~ 今はもう 初夏の幕開けなのである。 あっ、しょう(初夏)か!